日本人として初めてスペースシャトルに搭乗した毛利衛氏は現在、日本科学未来館館長として「理系の面白さ」の伝道に努めている。化学者としての人生を歩む中、宇宙飛行士としての強烈な体験を積んだ毛利氏に、理系のだいご味、理系学生へのメッセージについて話を聞いた。

「元から宇宙飛行士になるつもりはなく、科学者として身を立てようと思っていた」――。
宇宙飛行士の毛利衛氏(日本科学未来館館長)は幼いころ、理科好きな少年だった。「ポータブルラジオの登場、テレビの普及と、目の前に新しいものがドンドン現れてくる時代だった」。家庭では冷蔵庫も広まり、道路は車であふれるようになった。生活を豊かにする科学技術が次から次へと生まれる一方、南極のオーロラ観測、宇宙開発といった未知の自然の開拓でも理科は大いに貢献した。そんな環境で少年時代を過ごすにつれ、毛利氏は「素直に理科は面白いと思うようになった」。
毛利氏は特に後者、未知の自然を切り開く理科の面白さに惹かれていく。「月の裏側に何があるんだろう。宇宙人の基地があるんじゃないか。そんな想像でワクワクしていました。日常的なものよりも、未知の自然を見せてくれるところに惹かれたんです」。宇宙飛行士にはあこがれたが、当時の日本には宇宙飛行士はおらず、まさに夢の職業。後年、自分が宇宙飛行士になるなど、想像だにしなかった。
少年期の体験を通じて理科への興味が芽生えた毛利氏は、中学に入り、自分に理系の素養があることに気づく。「一番好きなのは化学の実験でした。沈殿物を作ったり、色を変えたり。そんな化学反応が好きでした」。単に好きなだけではなく、実験も得意。いつしか毛利氏は、化学なら誰にも負けないという自信を持つようになった。