
毛利氏によると、宇宙の“黒”は、宇宙の始まりの温度の表れなのだとか。ビッグバンによって、何もないところにゆらぎが生じ、エネルギーが四散した。その際のエネルギーが今も宇宙に広がっている。「エネルギーの量は変わりません。ビッグバンによって広がったエネルギーの多くは、空間に飛び散り、宇宙の果てへと広がっているわけです。果ての色は完全な黒ではなく、拡散中のエネルギーの熱量を持つわけです。バーンと爆発したわけだから、均一ではなく、ちょっと温度のゆらぎがあるはずです。そのゆらぎが、スペースシャトルから機材を使って観測できたんですよ」。毛利氏による発見は、それまで理論だけだったビッグバンが実在し、宇宙が膨張中であるとの説を支える証拠の一つとなった。
理系にも、自然科学寄りの人と、工学寄りの人がいるが、宇宙飛行士には工学寄りの人が多い。「私は両方の特性を持っていました。宇宙の“黒さ”は、私ならではの気づきだったのかもしれませんね」。宇宙上で、人類以外に知的生命体は存在するか? この問いに対しては、多くの人が関心を持っていることだろう。ハッブル望遠鏡などの観測設備が整うにつれ、われわれはその答えに近づきつつあるという。「太陽系以外の恒星が、惑星を伴うか否かが最近になって分かるようになってきました。この10年の間に、該当する恒星が100個以上見つかっています。次は、地球のような海のある惑星を見つけようとすることでしょう。向こう10~20年で、海のある惑星が観測できるようになってくるわけです。さらに次は何かというと、その惑星に生物がいるかどうか、そのまた次には高等生物がいるかどうか……」。
科学者の発見によって、われわれの常識はドンドン変わってきている。「芸術や政治経済にもそれぞれ面白さはあるでしょう。理系の科学者の面白さというのは、未知のものを明らかにしていく、大発見をするという面白さ。それにワクワクできるのが科学者のだいご味なんですよ」。
学生に送るメッセージとして、毛利氏は「興味を持っているのなら、勉強すれば実現できることに対しては、逃げないで、自分のポテンシャルを高めて向かっていってほしい」と語る。
「学生の時には、本当に失敗してもいいんですよ。困るのは自分だけだから。学生のころの失敗は、後でとても役に立ちます。企業に入ってから失敗すると、一生ついて回るけれども、大学での失敗は全然関係なくなります。どうってことはないんです。学生じゃないとできないくらいの怖い失敗をしてもいい。失敗して元々だという気持ちでチャレンジしておけば、その後の人生はガラッと変わる。失敗しても糧になる。大学で何もしないと、そのままチャレンジしない人生になってしまいますから」。
(写真提供:JAXA)