2005年11月、東芝は「タイフーンロボ」登載クリーナー、VC-75TCシリーズを発表した。従来のサイクロン方式クリーナーでは、高い吸引力をと引き替えに、定期的なフィルターの手入れが不可欠だったが、それを事実上メンテナンスフリーにしてしまう画期的な製品だった。たまったゴミを捨てるだけで、買い換えの時まで使い続けられるクリーナーの秘密とは……?
従来のサイクロン方式の弱点を克服した画期的製品
「1歳半になるわたしの長男が、タイフーンロボのギミックでかちかち音が出るときに大喜びしてくれるんですよ。このとき、本当にこのクリーナーを作ってよかったと思いましたね」
それまで専門的な解説をしていた東芝コンシュマーマーケティングの家電事業部で商品企画を担当する小林博明氏が、急に相好を崩した。父親の顔だ。そこに、ものづくりの魅力が垣間見える。
家庭用クリーナーは、旧来からのフィルター方式、紙パック方式という進化の過程を経て、強力な吸引力とクリーンな排気を両立させるサイクロン方式へと発展してきた。
ワンタッチで手を汚さずにゴミを捨てられる紙パック式クリーナーの登場は、清潔さに注目しはじめていた消費者の指向とマッチした。しかし、紙パックいっぱいにゴミが溜まってくると、吸引力は極端に落ちてくる。そのため、ゴミでいっぱいになる前に捨てるのは紙パックがもったいないが、ゴミが溜まってくると吸引力が低下するという微妙な葛藤を感じさせた。
そこで登場したのがサイクロン方式だ。吸気を高速回転させ、遠心力でゴミを効率よく分離させる。分離しきれなかった細塵はモーター手前のフィルターでカット。これにより、強力な吸引力とクリーンな排気を両立している。
しかし、サイクロン方式も万能ではない。1~2ヶ月使用しているとフィルターが細塵で目詰まりを起こし、吸引力が低下する。その都度、フィルターの掃除や交換という手入れが必要だったのだ。その弱点を克服したのが、「タイフーンロボ」を搭載した東芝製クリーナーVC-75TCである。
わずらわしさからユーザーを解放
「タイフーンロボの搭載で、これまで1~2ヶ月に1回はフィルターのお手入れをしないと吸引力が落ちてしまったのが、およそ7年半も性能を維持できるようになったんです」。一般的にクリーナーの寿命はモーター部分の寿命で決まる。そのクリーナー本体の寿命が来るその日まで、面倒な手入れをせずとも十分な吸引力を維持できる、その成果に小林氏は胸を張る。タイフーンロボが画期的なのは、旧来のサイクロン方式の1.5倍近い時速310キロという高速回転で吸気からゴミを分離させる点、さらにその分離部とゴミを貯めておくスペースを分けてゴミを捨て易くする点にある。また、フィルターに付いた細塵を自動的に落とす「フィルターお手入れロボ」も搭載する。落とした細塵が再びフィルターに付着することを防ぐため、落とすと同時にすくい上げて分離部に運び込む機能も盛り込まれた。この分離からフィルターのお手入れまでの一連の機能の総称がタイフーンロボである。
2006年春には上位機種であるVC-80TX、そして9月にはさらに進化したタイフーンロボシステムXPを搭載したタイフーンロボXPシリーズが登場している。そのすべてに共通するのは、ユーザーがより気軽に掃除できるように作られていることだ。
めざす到達点と現代とを結ぶ筋道を考えるトレーニングを
「掃除は面倒くさいものだけど、生活から省略することができない部分。ですから、可能な限り掃除のストレスを軽減したいというのが基本的なコンセプトでした。そこで実際の掃除行動中の脳波を測定し、どんな動きのときにストレスを感じているかを分析しました。その結果、ターゲットになったのが掃除機の出し入れやゴミ捨ての瞬間だったんです」
そのコンセプトのもと、例えばVC-80TX以降の機種では、立てた状態で平均的な押し入れに省スペースで収納できる設計となっている。また最新のタイフーンロボXPシリーズでは、ゴミが一杯になると自動的にダストカップがせり上がる「オート満タンナビ」が搭載されるなど、ユーザーにとって嬉しい改良が続けられている。
こうした改良点は、技術的な知識のみで発案できるものではない。小林氏の企画開発のノウハウは、どんな視点で構築されているのだろう。
「まずは自分で商品に手を触れ、使ってみることですね。それから、分解して実際の機能を確認してみる。そうすれば、もっと改良したい部分が見つかるものです。同じことは、実際に使ってくださるお客様から寄せられる声にもいえます。あとは、めざす到達点と現状とをつなげる筋道を考えるだけです。学生のみなさんには、常にいろんな物事に対してアンテナを張っておいて、どんどんと問題点をクリアするトレーニングを積んでおいてほしいですね。難しく考えず、なんとかやってやろうという発想で。それが、いいものを生み出すコツだと思います」
| プロフィール |
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東芝株式会社
家電事業部 クリーンソリューション部
商品企画担当 主任
小林博明氏 |