
たとえばあなたが北極にいて、あなただけがストリーミング配信のできる機材を持っているとする。もしその時、その場所に100年に一度しか見られないオーロラが発生したら、その映像を世界に届けられるのはあなただけ。つまり、あなたが提供できるサービスの潜在価値は、その瞬間に、高い技術のカメラマンや映像作家とは別の次元で高まるのだ。
このときあなたが持つ価値こそがロケーションバリューの提唱する「位置の価値」である。その人がそこに居る、という事実が生み出す価値のことであり、それが他の人に求められることで、その価値はどんどん高まっていく。
しかし最初の例え話の場合、あなたが北極圏にいる、ということを世界中の人が知らないと、それは現実の価値にはならない。ロケーションバリューでは、この新しい位置情報を利用したサービスの第一弾として、携帯電話の位置情報をもとに超短期のおてつだいをマッチングする、「おてつだいネットワークス」を展開している。 同社代表の砂川氏は、慶応大学の島田晴雄ゼミで労働経済を学んだ経歴を持つ。「そこで労働力の資産性を学びました。資産だから当然売り買いが行われる。世の中には、ものをバルク(塊)で売る人もいれば、バラ売りをする人もいる。しかし今まで、労働力は1日以上の、バルクでしか売り買いされてこなかったわけです」。そこで、労働力をバラ売りする可能性について考えるようになったという。当初は、ネットオークションのようにネット経由でそれが売買できないかと考えた。「ですが、労働力というものは非常に腐りやすい資産です。自分が今、3時間の空きがあったとしても、それは3日後に受け渡しすることはできない。今、このときに売るしかないわけです」。ネット経由では、そのリアルタイム性も確保できなければ、受け渡しにかかる時間、つまり移動距離の問題も解消できないのである。

その後、日本における携帯電話のめざましい普及と、位置情報のやりとりが可能な機種の登場により、「労働力の切り売り」の可能性が現実味を帯びることになる。携帯電話であれば、即時性も確保できるし、今その人がどこに居るのかもわかる。ここで初めて「位置の価値」を具現化することが可能になったわけだ。
きっかけは労働力の切り売りだが、同社が事業のコアとするのは、その「位置情報の価値」である。これまで誰がどこにいるのか、という情報に絡めたサービスはあまり提供されてこなかった。地図情報を絡めたサービスなどは多少あったが、それはあくまでも地図をベースにしたものであった。「地図が必要なのは、そこに行く必要が出た時ですよね。それよりも重要なのは、そこに行くまでの段階であり、どこへ行き何をするか、それを決めるまでのサービスが重要なんです」。今その人がそこにいる、という位置の情報に意味を持たせ、「位置の価値」を具体化する。それは同社のビジネスのコアであると同時に、技術のコアでもある。つまり、位置情報の取得自体は、携帯電話のキャリアによって行われるサービスだが、情報はただ集めればいいというものではない。「情報は、掘れば掘るほど出てきます。どこでそれを切り分けていくかが重要なのです」。
位置情報をいかに意味のあるものにするか、「おてつだいネットワークス」の例でいえば、依頼者とワーカーを的確にマッチングできるアルゴリズムを作り上げる事こそが重要なのだ。そのために、データベースの設計にはもっとも力を入れたのだという。「今まで誰もやったことがなくて、ノウハウがないだけに、最適なデータベースにするために何が必要で何が不要か、という前例がありませんでした。ですが、その分胸を張って今までに誰もやった事のないサービスである、ということは言えると思います。ゆくゆくはテクノロジーオリエンテッドな企業となって、日本発のネットビジネスを作っていきたい、という意気込みでいます」。
「時間に価値がある」とはよく言われることだ。それと同じように、「位置に価値がある」ことを提唱し、それを具体化したのが「おてつだいネットワークス」である。冒頭のオーロラのように派手な例でなくとも、自分にしかできないことが、自分が「今、ここにいるから」可能になる。そんなサービスが同社の技術をきっかけに、今後飛躍的に増えていくことになるだろう。
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