スタンフォード大学工学部を卒業し、現在は経営コンサルティングのトップ企業であるアクセンチュアで代表取締役を務める程近智氏。海外から日本を見ることで日本の良い面、悪い面がよく見えたという。理系の人間がキャリアを積む上で重要な事とは――。
理系出身のコンサルタント

理系のコンサルタントが増加している。いわゆるシステムの設計などを行うシステムコンサルタントに限らず、経営コンサルタント、ビジネスコンサルタントなど、理系とは直接関係のない分野のコンサルタントにも、理系の人材が求められているのだ。
「かつては文系出身の人が多かったが、現在は入社するコンサルタントの半数は理系出身。コンサルタントに重要な、客観的・論理的に物事を捉えて分析できる、という部分では理系の人が強い」と語るのは数あるコンサルティング会社の中で名実ともにトップに立ち、特にITをコアとしたコンサルティングを得意とする、アクセンチュア株式会社の程近智氏だ。
しかし米国スタンフォード大学の工学部を卒業した程氏自身は、「そもそも、自分が理系か文系かを分けて考える、というのは僕のバックグラウンドにはなかったんです。アメリカの大学の4年間は予備校のようなもの。自分が本当に進みたい道は大学に居る間に決めればいい」。3年次には工学部に進んだが、いわゆる文系の講義も数多く履修した。自分が不得手な分野にまず挑戦し、本当に得意ではないのか、チェック機能を働かせるのがポリシーなのだ。
「工学部を選んだ大きな理由は、当時はアップル、インテル、サン・マイクロシステムズなどが出てきた頃で、ベンチャーが非常に盛んでした。シリコンバレーが形成されかかっていた頃。研究室の仲間2人で、アイデアがあったら会社を立ち上げる、というビジネスモデルが誕生して、盛んに行われていた時期でしたから。そういうのを見ていて、これは工学などの分野に可能性があると思いました」。
専攻したのは管理工学。生産管理などのマネージメントも学び、今の仕事と通じる部分も多かった。授業の代わりに実際にスポンサー企業の工場などに出向き、生産性を高めるためのコンサルテーションなども行っていたという。「そこは電子部品の工場でしたが、当時はちょうどジャパンバッシングに火がついていたころで、日本脅威論が盛り上がっていた頃でした。それで『お前は学生のふりをしたスパイだろう』なんて言われたりもしました(笑)」。
外から日本がよく見えた
卒業後は日本へ戻ることになるが、周りの日本人はアメリカに残りたいと思う人が多かったという。「海外に行った人間は7割はそこが好きになってしまいますが、3割は日本を外から見直して、逆に日本のことがよくわかって、良さも見えてくるのです。当時、アメリカから見た日本は、生産技術の高さなどで神秘的なまでの技術力を発揮していました。そして日本は実は凄いなと感じ、働きたいと思うようになりました」。
しかし、大学が海外のため、研究室から企業へというルートはなく、何より経営などの方面に進みたかった程氏は、自ら探した企業の1つとして、アクセンチュアと出会い、入社することとなる。
学生も金の流れを知るべき
「今思うと、日本とアメリカの大きな違いは、アメリカは教授と学生、大学と社会の交わりが盛んにあって、教授も大学を出て起業してまた戻ってきたり、当たり前のように人が流通していました。教授も、寄付という形で研究費を引っ張ってこれる人が、役職を得ている。学部長や学長などになるような人は、研究はもちろんビジネスマンとしても優れています」。
日本の研究室では、金銭のことはタブーのような風潮がある。しかし、ビジネスとして大学が運営できるからこそ、奨学金で何百人という学生をとることもできるのだ。「環境システムにおける水の流れのように、社会の中でお金がどう流れているか、学生も関心を持つことが重要。そして、自分の研究や開発が、どうやって最終的にお金になって、社会でどう流れているのかを知るべきです。そうすることで、自分が研究に進むのか企業に行くのか、コンサルティングをやるのか、はたまた金融に進むのかを考える土台になります」。