
| 「フーコーの振り子」 | |
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アミール・D・アクゼル 水谷 淳/訳
東京・上野にある国立科学博物館の天井からぶら下がっている振り子をご存知だろうか? あの4階から地下1階までの巨大な振り子こそが、人類史上初めて、地球が自転していることを証明することに成功した「フーコーの振り子」である。現代では、地球が自転しながら太陽の周りを回っていることは明白な事実となっている。しかし、それがまだ仮説に過ぎなかった時代、それを人類史上初めて科学的に証明したのが、本書の主人公であるレオン・フーコーだ。 本書『フーコーの振り子』は1851年代にフーコーが「振り子」によって史上最大の難題であった地球の自転を科学的に証明することに成功したエピソードについて書かれている。興味深いのは、彼が当時の学界などに所属していた科学者ではなく、専門的な教育を受けていない素人同然の科学者であったということである。 なぜ素人同然のフーコーが、科学史上に残る偉業を成し遂げることができたのだろうか? 著者は、フーコーが自然界に対する理解が深く、身の回りの物理世界を感じ取る能力を生まれつき備えていたことと、何より彼の真理に対する強烈な探究心と情熱があったからだと示す。正規の教育を受けておらず、自らに数学的な素養がないことを自覚していたフーコー。それならばと自分の手先が器用であったことを生かし、仮説を証明するための実験装置を自らの手で作り上げたのだ。 フーコーが学界に所属していない「不正規な科学者」であったことも、相当な向かい風であった。この画期的な実験が見事に成功した後も、当時の学界からは冷ややかな視線を受け続けることになる。しかしその後、ルイ=ナポレオン・ボナパルトに目をかけられ、フランスの英雄に与えられる最高の栄誉を授かることになる。さらに、他界する間際の数年にはその業績に値する数々の栄誉を授かるに至っており、彼の半生は、科学に関わる若者に勇気を与えてくれることだろう。 科学の本質は、自然現象に秘められた真理の探究といえる。才能があろうとなかろうと、世間からの冷たい視線が長く続こうと、真理の探究にひたむきに取り組むフーコーの生き様は、人間が持つ知的好奇心を素直に呼び起こしてくれる。科学を実践し、偉業を成し遂げることができるのは、机上の理論家ではなく、真理に対するあくなき探究心と、自然界に対する理解をもった人間であるということを教えてくれる一冊である。 |