CuteI1・7 + APD のミッション
しかし、いくら小さいとはいえ、さすがに人工衛星の開発は一筋縄でいくようなものではない。打ち上げに至るまでには、かなりの労力が費やされているという。
「CUTE Ⅰの開発に要した時間と人数は、ざっと見積もって7万時間・人ほど。時給1000円だとしたら、7000万円分もの労働力が注ぎ込まれた計算になります。無償で作業してくれる学生なくしては絶対に成り立たなかったでしょうね」
教育プログラムとしての側面も持つCubeSatプロジェクトでは、衛星の設計から開発・打ち上げ・運用まで、全てが学生主導で行われる。技術やノウハウだけでなく、プロジェクト・マネジメントまでをも包括的に学ぶことができるため、「CUTE開発を通じての学生の成長度には、目を見張るものがある」と松永准教授は語る。
そんな松永研究室にとって3機目のCubeSatとなる、今回のCUTE 1・7+APD 。メインコンピュータとしてPDAが搭載されているのが大きな特徴となっている。そうした民生品が宇宙環境でも正常に動作するかどうか確かめることも 、CUTEにとっては重要なミッションなのだ。
「宇宙では過酷な放射線や温度環境に曝されますから、そこで使用される部品の多くも通常数千万円クラスの高価なものばかりです。それがPDAのような安価な民生品でも代替可能な仕組みを作り上げることが出来れば、将来的に人工衛星開発にかかるコストは大幅に下がっていくでしょう」
また、CUTE 1・7+APD には、高層大気の荷電粒子密度を測定するという重要なミッションも与えられている。衛星そのものの工学的な動作実験だけを行うという段階を、CUTEはもはや超えていると言えるだろう。
300年もの間宇宙を漂うCUTE
「日本の宇宙開発の歴史に名前を残したという自信はありますね」
松永准教授は、2003年の打ち上げ以降いまだに飛行を続けているCUTE 1を振り返り、そう胸を張る。そしてもちろん、今秋打ち上げ予定のCUTE 1・7+APDあも、その歴史に新たな一ページを刻むはずだ。
順調に飛行を続ければ、軽く2、300年は宇宙を漂い続けるという超小型人工衛星。学生が主導となって作り上げた小さな「星」は、宇宙工学史上燦然たる研究成果として、文字通りわれわれのはるか頭上で輝き続けるのである。
| プロフィール |
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東京工業大学大学院
理工学研究科/機械宇宙システム専攻准教授 松永三郎
1986年 名古屋大学工学部航空学科卒
1991年 東京大学大学院工学系研究科航空学専攻博士課程修了
1992年 東京工業大学客員教官
1999年 東京工業大学助教授
専門分野は、宇宙システム工学、小型衛星システム、宇宙ロボット工学。 |