
電気自動車『S3』は総重量100kg、乗車定員1人の非常にコンパクトな車両だ。道路交通法上は「ミニカー」に分類され、公道も走行可能な立派な自動車である。エネルギー源は当然リチウムイオン二次電池であり、150kmの連続走行が可能となっている。ポルシェをイメージしたという、曲面的なボディは、どこかクラシックカーも思わせる非常に印象的なデザインである。
この『S3』の開発に当たって、2台の試作モデルは1台当たり2000万円の費用がかかったという。問題は資金面だけでない。部品こそ外注したものの、溶接など組み立てはENAXで行っており、当初は専門書から知識を仕入れたという。「必要な知識は本から十分手に入る。重要なのはそれを活かせる知恵があるかどうかです」と小沢氏が語るように、同社の技術と知恵を結集した『S3』は2002年に発売された後も順調に販売数を伸ばし、今では年間10億円を売り上げるに至っている。
その間も大手自動車メーカーはハイブリッドカーを中心に電気自動車の開発に取り組んできたが、現状では単位重量あたりでより多いエネルギーを持ち運ぶことができる、ガソリンや軽油を用いる内燃機関の方が有利な部分があることは否めないようだ。
しかし電気自動車もメリットは多い。電気モーターの場合は低速でも最大限のトルクを発揮できるため、都市部のように加減速や停止を繰り返す環境であれば電池の方が有利になってくるし、前述のように多くのエネルギー量を搭載することは難しいものの、エネルギーの利用効率では内燃機関を上回っており、当然ながら環境負荷も小さい。また、燃料電池車との比較でも、インフラや安全面などで、リチウムイオン二次電池を用いた電気自動車は有利だという。
このような現状を踏まえた上で小沢氏は、より高性能な電池を開発していくことがやはりポイントであり、ENAXの最大のミッションもやはりそこにある、と語ってくれた。