「不可能」の代名詞と言われた“青いバラ”。5000年前の古代文明の頃から2万5千種以上ものバラが栽培されてきたといわれるが、現在に至るまで青いバラは一つも存在しなかったという。長年多くの育種家が凌ぎを削ってきたその青いバラの開発を、世界で初めてバイオテクノロジーを用いて成功させたのがサントリーの研究開発チームである。
本当に実現するかわからない困難な研究テーマに身を投じ、自ら“結婚”、“出産”、という人生の転機を経ながらもその夢を実現させた、チームの主要研究員である水谷正子氏。今回は、昨年は妊娠しながら弁理士試験に合格したという同氏に、夢を叶えるまでの「仕事に対する姿勢」をうかがった。
現在、仕事で取り組まれていることについて教えてください。
主に青いバラの研究開発をしています。2004年に青いバラの完成を広報発表していますが、ご覧になると分かるように、「青」と言っても実はまだまだ本当の青とは少し違いますよね。薄紫に近いような。ですから、今はバラの色味を更に青に近づけるための研究をメインに行っています。
そのほかは、環境に関する研究テーマに複数携わっています。いわゆる遺伝子組換えによって、新しい有用な植物を作ったり。植物科学研究所といっても社員は6、7名ですから、ほとんどのメンバーがどれにもかかわるような体制で仕事に取り組んでいます。
どのような役割を担当されているのでしょうか。
最初に植物に組み込むための遺伝子を採ってきて、それを植物の中で働く形にして加工するところまでですね。準備が整うと、次はその遺伝子を植物に組み込んで育てるステップになるので、そこからは別のメンバーが担当することになります。植物が育ってくると、遺伝子が正常に働いているかを調べることが必要で、そこも私が担当しています。
実際に青いバラもサントリーだけで開発したわけでなくて、オーストラリアのバイオベンチャーと当社の研究チームの共同プロジェクトで行っていました。
研究で苦労されたことは?
そうですね、技術的には色々ありますが……さまざまな植物から青色遺伝子を取り出して何度試行錯誤しても、うまくデルフィニジンという青色色素ができず、青いバラが咲かない状況が続いたりとか。ただ、チームで取り組んでいた研究なので、技術的に大変になっても、あまり落ち込む人はいませんでしたね。脈々と続けているうちに、ようやく完成という感じでした。夢みたいなテーマだったので、本当に実現するかもわからず、プレッシャーはありましたね。その中で研究を続けさせてくれた会社にはとても感謝しています。
あと、個人的には時間との戦いが一番つらかったです。研究職って、本来「今日何時になったら終わり」という仕事ではないと思うんですね。でも、結婚して子供が出来て、絶対この時間で区切りをつけて仕事を終えなければならない。その時間との戦いが今までで一番大変でした。
その“ライフワークバランス”のコツを教えていただけますか。
「会社にいる間は仕事に集中」、「家に帰ったら、子供が寝るまでは家のことに集中」、「子供が寝たら、夜中に勉強」と、時間を切り分けることですね。全然種類の違うことなので、全部を一緒にはできないですから。
3人目の子供が1歳になったので、ちょうど弁理士の勉強を始めたのですが、実は昨年2回目の受験の1次試験と2次試験の間に4人目を出産しているんです。産休はもらいましたが、その後すぐ仕事には復帰しています。