日本の高度成長期を支えた基盤産業。木村鋳造所はその名の通り、基盤産業の1つである鋳造の最先端を行くメーカーだ。フルモード鋳造法という、鋳造を一新する技術革新を世界でもいち早く達成し、今も革新を続けている。日本の一企業が世界をリードするまでにならしめたフルモード鋳造法とは。そしてその達成にはどのような苦労があったのか、お話をうかがった。
鋳造業界の革命児になる
2000年ごろ、ITは最先端産業として脚光を浴び、日本政府はIT立国を目指してe-Japan戦略を掲げた。ところが、今やIT立国と言われるのは、残念ながらインドなどの新興国である。「ものづくり」で見せた圧倒的な強さを、ITで得られなかった日本は、原点回帰して鋳造・金型などの基盤産業を再強化しようとしている。
そんな基盤産業の一角である鋳造業において、約40年ほど前から大きな転換が起きている。木型を用いる従来の鋳造法から、溶湯(溶けた鉄)で発泡スチロールを溶かして鋳物を作るフルモールド鋳造法(FMC法)への転換である。
FMC法は、発泡スチロールの模型で鋳型を造る。発泡スチロールの加工性の良さから、模型が簡単に作れるので単品モノに向いている。木型法は図面に頼るしかない為に完成品のイメージがつきにくいが、FMC法では模型で最終形を確認できる為、途中の修正が効きやすい。図面ミスや追加の要望が見つかっても、すぐに修正を加えられ、木型法と比べリードタイムを大幅に削減できるというメリットもある。
約40年前に知られたFMC法は、一時は国内で100社以上に導入されたものの、その数はすぐに落ち込みを見せた。当時は木型法に対して品質で大きく劣ることは否めず、大きなサイズや高品質が求められる領域では顧客の要求レベルを満たせなかったからだ。
FMC法から撤退する企業が後を絶たない中、最後まで技術革新を続けたのが木村鋳造所だ。辞めなかった理由を「懇意にしてくれていた大手自動車メーカーから、FMC法でプレス金型をやらないかと頼まれたのです。」と説明する。金型をスピーディーに調達できなくなっていたお得意様を助けたい。その一念が強かった。
ただ、そこからは苦難の連続だった。まずは鋳物の品質を良くしようと、不純物がどこで混ざるのかを徹底的に調査し、原因を突き止めるところから始まった。苦労の末、鋳造工程で溶湯に混ざってしまう塵や砂、及び模型に使う発泡スチロールの燃えカスなどが原因と突き止めた。そこからがまた一苦労。金属に関するプロたちでも、劇的な改善策を打てないでいた。顧客企業に怒られ続ける日々。「FMC法はやっぱりダメだと見切られて、すべて終わってしまう可能性もありましたが、お客様の寛容さに助けられながら、技術革新にとにかく注力していましたね。」と当時を振り返る。そしてついにたどり着いたのは、溶湯を流し込む工程ではなく、もっと前工程で使用する塗型材の改良だった。