創業者本田宗一郎の生誕から100年が経ち、今や世界第7位の自動車メーカーとなったHonda。自動車製造で培われた確かな技術力は、地球環境問題に対する取り組みにおいても大きな役割を果たしているという。CO2低減のためのHondaの切り札とは――?広報部主幹の奥野氏にお話を伺った。
世界一のエンジンメーカー
二輪車・四輪車・汎用製品という3本柱を軸に、近年ではロボットから航空機、太陽光発電システムまで、多岐に渡って事業を展開するホンダ。人々の移動(=モビリティ)に関わるものは、すべて同社のビジネス領域となりつつあるようだ。
2006年も、二、四、汎のすべての事業領域において販売台数で過去最高を更新し、年間で2000万台超の製品を世界中の顧客に提供した。3製品全てにエンジンが付いていることを考えれば、Hondaを世界一のエンジンメーカーと呼ぶことも、あながち間違いとは言えないだろう。しかし、それは裏を返せば、同社が環境負荷に対して非常に大きな責任を持つ企業だということでもある。
「エンジンは、限られた天然資源であるガソリンを消費して、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を放出する機械。当然地球環境に対するHondaの影響は大きいものがあると認識しています」
と広報部の奥野氏は話す。事実、Hondaは環境問題に関してさまざまな取り組みを行っているというが、果たしてどのようなものがあるのだろうか。以下で詳しく見てみよう。
自動車産業の3大課題とは
現在、自動車産業にとって三大課題と言われているのが、大気汚染と地球温暖化、将来的なエネルギー枯渇の3つである。今後、BRICsやアジア諸国の台頭によって自動車がさらに普及すれば、これらの問題がますます深刻化していくことは明らかだろう。
しかし、このうち大気汚染に関しては、すでに技術開発にしのぎを削り、成果をあげてきた。1970年にマスキー法という、排出ガスに含まれる有害物質を従来の10分の1に低減させるための法律が成立したが、Honda技術陣はこれをチャンスと捉え、1972年CVCCという新型エンジンを開発することに成功。これは世界で初めてマスキー法をクリアしたエンジンとして、1973年Civicに搭載して発売され、その後のHondaのクリーン化技術の先駆けとなった。同エンジンは今年、日本機械学会の機械遺産にも認定されているが、開発から40年近く経った現在、マスキー法時代に比べ自動車のHC排出は約1/1000のレベルにまで低減されており、最新のSULEV車では、ほぼ大気に近いレベルまでその排出ガスはクリーンになっているのである。
その一方で、CO2による地球温暖化は依然、自動車産業のみならず日本全体にとって大きな課題として残っている。10年前の地球温暖化防止京都会議時から比較しても、日本は約14%も温室効果ガスの排出量が増加してしまっている状況だ。今年ドイツで行われたサミットでは、「2050年までに世界全体の温室効果ガス排出量を半分以上削減させる」という目標が新たに立てられたが、その実現法についても未だに明確な道筋は見えていない。
「ただ、少なくとも一つはっきりしているのは、世界全体のCO2総排出量のうち自動車が占める割合は小さくないという事実です。つまり、もしCO2排出量の少ない自動車を普及させることが出来れば、結果的に世界全体のCO2排出量も減少するはずなんです」
進化型VTECエンジンとクリーンディーゼルエンジン

そのような状況を受けて、ホンダは昨年「最もCO2排出の少ない工場で、最もCO2排出の少ない製品を生み出す」企業を目指し、「2010年世界CO2低減目標」を発表した。これは製品生産時に工場から排出されるCO2と、自動車が走行時に排出するCO2の両方を、2010年までに2000年度実績から10%低減させようという試みだ。
「自動車からのCO2排出は、エンジンの燃費性能を向上させることによって低減されます。昨年発表した『進化型VTECエンジン』は、ホンダらしい走りを持たせるためのエンジン出力と、低燃費・低エミッションを高い次元で両立することに成功した、最新型のエンジンです」
他にも、ハイブリッド車やクリーンディーゼルエンジン車、FFVと呼ばれるエタノール燃料で走る車などの開発を通じても、ホンダはCO2低減に取り組む。例えば、ディーゼル車。ディーゼルエンジンの一番の長所はガソリンエンジンに対して燃費効率が20~30%高いことだが、問題は、排出ガス中にNOxやPMなどの有害物質が多く含まれていることだった。年々厳しくなっていく各国の排出ガス規制だが、ホンダが昨年9月に発表した新世代ディーゼルエンジン「i-DTEC」は、最も厳しい排出ガス規制であるアメリカの「TierⅡ Bin5」排出ガス規制レベルを、世界で初めてクリアした。
「キーとなるテクノロジーは、新燃焼室の採用や、ピエゾ式インジェクターを採用した超高圧のコモンレールシステムによる燃焼改善で、さらに後処理装置として新開発のリーンNOx触媒を追加しています。それらを高精度に制御することでTierⅡ Bin5を達成することができました。エンジン全体も非常にコンパクトにまとまっているので、乗用車への搭載も容易なんです」これでホンダのディーゼルは一気に進化したと奥野氏は胸を張る。