
内燃機関の燃焼改善、ハイブリッド、クリーンディーゼル、エタノール。さまざまな方向からCO2の低減へとアプローチしているホンダだが、中でも究極の解決策の一つとして注力しているのが、燃料電池自動車の開発である。
水素と酸素の結合反応時に発生する電力を利用する燃料電池システムだが、それによってモーターを動かす燃料電池自動車は当然水しか排出せず、大気汚染物質を一切発生させることがない。また、ガソリンに比べエネルギー効率も約3倍と高い。
ホンダは1980年代から燃料電池自動車の基礎研究を開始しており、99年FCX-V1、FCX-V2というプロトタイプを発表。2004年に氷点下20度でも作動する燃料電池を装備したFCXをニューヨーク州に納入した。
「FCXの特徴の一つとして、ホンダが独自に開発した高性能ウルトラキャパシタが挙げられるでしょう。FCXでは、ブレーキをかけたときにモーターが発電機に変わるんですが、そこで発生した電力はこのウルトラキャパシタというコンデンサーに蓄えられます。その電力が、スタートや加速の時にモーターの主動力源である燃料電池をサポートするという仕組みなんですね。そういう意味では、これも一つのハイブリッドシステムだといえるかもしれません」
昨年にはFCXコンセプトと呼ばれるこれまでのFCXとはデザインも性能も格段に進化した新型の燃料電池自動車を公開し、さらに先月、新型燃料電池車「FCXクラリティ」を発表した。すばやい開発の背景には、かつて天然ガス自動車開発時に培った高圧タンク技術と、電気自動車で培ったバッテリー技術、ハイブリッドカーで培った電力マネジメント技術という3つの技術の存在が大きかったという。自動車製造会社として長年にわたって積み重ねてきたホンダの技術力が、いかんなく発揮された形と言えよう。

では、先月発表され、米国では2008年夏より個人客などにリース販売を開始するという新型燃料電池車FCXクラリティは、従来のFCXとはどのような違いがあるのだろうか。
「従来の燃料電池では水素や生成された水を水平に流していましたが、FCXクラリティでは縦方向に流す仕様になっています。重力を利用して生成水をよりスムーズに排出。これにより、生成水が発電面に溜まるのを防げる上、流路の深さも17%浅くすることができたので、結果として燃料電池自体の大きさもかなり小さくすることができました」
FCXクラリティが従来機と明らかに一線を画しているのは、低全高で流れるようなフォルムの見た目からも明らかだが、そのデザインを可能にしたのも、燃料電池の小型化が可能にした新パッケージングによるものだ。大手自動車会社からさまざまな燃料電池自動車が出ているが、すべて車体ベースをSUVやミニバンとしているために車高が高い。ホンダはそこから初めて一歩抜け出し、普通のセダンなみに低く室内空間も広いという、燃料電池車では特異なプロポーションを持つ車を生み出すことに成功したのである。
「従来のFCXと比較し、航続走行距離も30%向上、最高速度も160km/hまで出ます。これは、2~2.4Lクラスのガソリン自動車、ホンダで言えばアコードクラスの車とほとんど遜色ない数値です」