アクチュアリーとは、確率論や統計学といった高度な数学理論を駆使して、将来のリスクや不確定要素を予測する "数理のプロフェッショナル"のこと。主に保険会社や信託銀行で活躍する、まさに理系のための職種だといえよう。
  このアクチュアリーの採用や育成に特に力を入れているのが、日本興亜損害保険株式会社だ。昨年人事制度を大きく改革し、前年比5倍のアクチュアリー候補者を採用した同社に制度の概要について伺った。

優秀な理系人材が、中長期的に安定したキャリアを築ける制度を

―昨年アクチュアリー専用の人事制度を導入されたとお聞きしましたが、特にアクチュアリーの育成に注力されているのは何故でしょうか。

 保険という金融サービス商品を提供する「メーカー機能」を強化していきたいと考えたからです。私たちは実際に「物」を作るわけではありませんが、代理店等を通じてお客様に保険という「サービス商品」を提供しています。お客様の信頼を得るためには、シンプルでわかりやすく、魅力的な保険商品を作っていかなけ
ればならないし、かつ、会社の安定した財務状況や適切なリスク管理体制も担保していかなければならない。そうなると、アクチュアリーの役割が重要になりますよね。
  メーカーであれば工場を増設すれば生産性が上がりますが、私たち金融の場合、人員を2倍にすれば2倍のパフォーマンスが発揮できるかというと、決してそうではありません。一人ひとりの人間力というか、人材の能力が向上して初めて会社としての生産性が上がる。特にアクチュアリーは保険会社の根幹を担う職種なので、社内でアクチュアリー人材育成のための仕組みが必要だと考えました。

充実したバックアップ体制でアクチュアリーを育てる土壌を創る

―具体的に、その人材育成のための仕組みとは?

 まず、アクチュアリーの資格は一朝一夕で取得できるものではないので、理系出身の数学的な素養のある人を採用して育成するために、アクチュアリーコースを新設しました。アクチュアリーコースで採用された人は、研修制度や配属先などの点でさまざまなバックアップを受けることができます。
  例えば、入社後は基本的にアクチュアリー育成部門であるリスク管理部保険数理グループに配属され、そこで準会員(※注1)取得までは勉強に専念していただきます。将来的にアクチュアリーとして活躍してもらうことが最優先なので、「日常業務が忙しすぎて勉強できない」なんてことがないように職務を調整しやすい環境を整えています。ただし、アクチュアリーを切り口に具体的なキャリアビジョンを持っている人については、希望通りの配属も行います。昨年は、保険がプロダクトアウトされるプロセスを知りたいからと、最初の3年間は営業を希望した内定者もいましたね。
  あとは、いずれの部署に配属になるにせよ、アクチュアリーコースの社員には、日本アクチュアリー会主催の有料講座への派遣や社内勉強会でのアクチュアリー育成担当者による指導など、充実したサポート体制を敷いています。その他、社員のみの自主勉強会や強化合宿なども多数開催されていますね。
  また、入社前も「内定者支援メニュー・アクチュアリー編」を用意して、早期に合格を目指す内定者をサポートする体制を整えました。社員同様にアクチュアリー会講座への派遣や社内勉強会への招聘を認めたり、アクチュアリー試験の過去問題集の無償提供を行ったりもしています。頑張れば、入社までに2、3科目合格することも不可能ではありません。一般的には、正会員(※注2)になるまでに平均7~8年かかるといわれていますが、いち早くスタートアップして資格を取得することで、早くアクチュアリーとなり、活躍していただきたいと思っています。


※注1 アクチュアリー資格試験の基礎科目「数学」「生保数理」「損保数理」「年金数理」「会計・経済・投資理論」の5科目に合格した者を「準会員」と呼ぶ。
※注2 基礎科目に加え、応用科目2科目に合格すると「正会員」となり、正式に「アクチュアリーを名乗ることができる。試験は、「生保コース」「損保コース」「年金コース」の3コースからの選択制。

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