―アクチュアリーになったきっかけやこれまでのご経歴を教えてください。
私が入社したのは1970年代半ばで、まだ損害保険業界では理系出身者が少ない時代でした。ちょうどその頃、東京で国際アクチュアリー会議が開催されることになり、数理の専門家として研究や分析を行って諸外国に向けて論文発表することを要請されたんです。国内のアクチュアリー正会員の人数は現在の5分の1ほどで、今より更に狭き門でしたね。当時はまだ先駆者がいなかったので、自分自身がパイオニアとして挑戦したいという想いもあり、アクチュアリーを目指しました。
当初は、積立保険を中心とする商品開発、営業・商品施策の定量的効果分析に携わっていました。その後は主計課長として決算業務を、また再保険部長としてリスク分析・管理業務を担当。現在は役員として、情報システムやIT部門も担当し、社内の情報インフラ整備や業務効率化を推進しています。
―損害保険会社でアクチュアリーとして働く魅力は?
「バレリーナの脚からロケット・原子力発電まで」というように、多種多様な保険商品を扱えることですね。生命保険会社と違うのは、あらゆるリスクが対象になり得るので、常に新たな分野に挑戦する余地があることでしょう。かつ、その原価は契約後何年か経ってみないとわからない不確実性を有するため、緻密に料率を算出したり、責任準備金をしっかり積立てておくなどの管理が必要不可欠です。アクチュアリーの技能や判断が会社の業績に直に反映され、契約者保護という社会的責任をも担うという点で、大きな責任とやりがいを感じます。
特に日本興亜では、社内におけるアクチュアリーの活動範囲が広範で、本社の部門であればどこでも活躍できることが大きな魅力ではないでしょうか。前述したように私が経験してきた分野のほかに、資産運用や経営企画、営業推進、人事企画などあらゆる部門で活躍が展望できます。「数理」という武器を持って、スペシャリストでありながら、ゼネラリストとしてのキャリアを築いていけることも、当社でアクチュアリーとして働く醍醐味ですね。
―アクチュアリーに求められる能力は?
アクチュアリーというと、「計算ばかり」というイメージを持たれる学生さんも多いかもしれません。しかし、数学はあくまで「手段」であり、一番大切なことは論理を相手に理解してもらうことです。いわゆる「コミュニケーション能力」ですね。複雑な数式が何を示しているのか、なぜこういう分析結果になったのか、アクチュアリーは万人にわかる言葉で説明することが求められます。専門家になればなるほど、専門家ではない人にもわかりやすく説明し理解してもらわなくてはならない。また、お客様か社内か、新入社員か経営層かでも、説明の仕方も異なりますよね。
もちろん、前提条件として問題点を抽出する能力や分析結果から将来予測を立てる能力は必須ですから、深く広い知識・経験・見識も身に付けなくてはなりません。そういった点で、新入社員の場合は、謙虚な気持ちと意欲を持って経験ある先輩に学ぶ姿勢が大切です。アクチュアリーに求められるのは、決して数理的能力だけではないと思いますね。
―今後のキャリアビジョンをお聞かせ下さい。
正直に言うと、アクチュアリーとしてはこれ以上望むものはありません。会社では一通り自分のやりたいキャリアを実現し、国際アクチュアリー会ではアジアの損保代表を務め、現在では当社役員と日本アクチュアリー会の副理事長も兼任しております。ですから、あとは、これまで築いたキャリアや想いを託すことができる人材を、どれだけ育成できるかですね。 「自分の力の50%を人材育成に――」当社社長が常々申しているように、次世代の日本興亜を担うアクチュアリーを育ていきたいと考えています。
専門職として活躍する道を選ぶ事は、「就社」ではなく、まさに文字通り「就職」です。「日本興亜でアクチュアリーとして働けて良かった」そう思う人がたくさんいる環境を作っていければいいですね。
日本興亜損害保険株式会社
取締役 常務執行役員
藤井 康秀(ふじい・やすひで)
|