現在我々は、キーワードとして「社会人基礎力」という能力を重視し、この能力を持った人材の育成を目指しています。これは、従来重視されてきた基礎学力や専門知識とは異なり、「前に踏み出す力」や「考え抜く力」「チームで働く力」といった、従来は個人の資質として捉えられてきたものを、新しい価値の創造が評価される現在の時代背景から今社会人が持つべき能力として定義したものです。言い方を変えれば、実際に企業が求める人材像、というのはこれまで抽象的でしたが、それを具体的な能力として定義しようというものです。世界的にもこのような能力は重視される傾向にあり、こういった能力に関するテストを始めている国もあります。
理系の学生は、勉強は非常によくしてきていると思います。ただ、企業の人事部の方がおっしゃるのは、勉強ができるのは素晴らしいのだけど、それ以上に問題なのが、チームの中で働くために重要なコミュニケーション能力が昔に比べるとだんだん低下してきているのではないかということです。社会に出るまでの期間が長い大学院生の方がその傾向が強いとおっしゃる方もいました。
これは理系の学生に関わらず、世の中の全体の傾向としてもあります。核家族が増えたこと、年配の方とのコミュニケーション機会が少ないこと、部活動、集団活動が減っていることなど様々な原因があります。また、インターネットの普及もあり、Eメールや、ケータイメールだけでコミュニケーションが完結する時代になっているのも影響しています。また、正解が決まった知識を身に付けることに主眼が置かれた教育内容であれば、どうしても、答えのない課題に対して他人とチームを組んで取り組むといったコミュニケーション能力を育てる機会が少なくなってしまうといったことも一因かもしれません。
適切なコミュニケーションがとれてチームワークを図っていかなければ、個々人の専門知識を相互に活かすことができず、新しい商品や産業の創出につながっていかないため、せっかく専門知識を持っていたとしても、それを生かせないままになってしまうということです。非常にもったいないことです。
そういう意味では、社会で通用するコミュニケーション能力を身につけるためには、自分と異なる社会人と会社の抱える課題に取り組んだりする経験が得られるインターンシップは非常に良い機会であると考えています。年代もバックグラウンドも違う社員の方々と一緒に何かを解決したり、何かを作り出す体験ができたりするというのは、今まで経験がほとんどないだけに、飛躍的にみなさんのコミュニケーション能力を高めてくれると思います。
我々の調査では、長期のインターンシップに参加した学生の多くが、最初の一ヶ月で自己評価が下がるのです。どういうことかというと、社会に求められるレベルと現状の自分のギャップがはっきりするため、自分の足りないところがわかるわけですね。その後、逆に自分にできることに気がつき始めるのと、チームの中でどういう役割が自分に向いているのかを自覚し始めて、二ヶ月三ヶ月と経つに連れ自己評価が上がっていきます。
そうすることで、自分は今後何を身につけていくべきか、チームの中でのどういう役割に自分の能力を発揮できるのかがわかってきます。他人と自分を相対的に比較できる機会としてインターンシップは最適であると考えています。できれば、インターンシップの経験を通じて、自分がどこに強みがあるのかを知って欲しいですね。「自分はこれが得意」というのが見つかれば、社会の中で自分は何をしていきたいのかという目的意識にもつながりますし、その後の自分の成長に大いに役立つことでしょう。
インターンシップを、企業の「見学」だけで終えてしまうのはもったいないです。ぜひそういったことを意識してインターンシップに本気で取り組んでもらいたいですね。