現在の男女雇用機会均等法が、最初に制定されたのは1972年。株式会社ヘルス・ソリューションの代表取締役を務める藤原亜紀子さんは、同年に東京大学農学部の博士課程を修了し、理系出身である強みを活かして、研究職、コンサルタント、自ら起業という当時では珍しいキャリアを歩んできた。まだ女性がビジネスの最前線で活躍することが少なかった時代に、なぜそのようなキャリアを選択したのか。その経緯について伺った。

――現在、株式会社ヘルス・ソリューションの代表取締役をされていますが、具体的にどういった事業をされているのでしょうか。

 主に認知機能を測定する検査システムを医療機関等に提供しています。システム自体はオーストラリアのCogState社が開発していて、当社は日本における独占代理店契約を結んでビジネスを展開しています。私自身、ずっと医療・ヘルスケアの分野で働いていましたので、日本の高齢化に伴って認知症治療のニーズが今後高まることを強く感じていました。現時点では認知症の分野にのみ注力していますが、将来的には広く健康管理・予防医療に有効なソリューションを手掛けていきたいと考えています。

――理系出身の女性で起業された方は珍しいと思いますが、そのきっかけは?

 小さい城でもいいから、いつかは自分で会社をやりたいという気持ちはありましたね。これまでずっと医療・ヘルスケアの業界で働いていて、「医療業界の次の10年をサポートするような技術は何だろう?」と常にアンテナを張っていました。その中で、「これだ!」という技術に出会ったのがきっかけです。それが、今当社が独占契約を結んでいるCogState社の開発した認知機能を測定する技術。
  今までは認知症の測定というと、医師が質問してどれほど答えられるかという、心理テストのような形しかありませんでした。感度よく再現性のある形で数値化する技術がなかったので、認知症の治療技術もなかなか進歩しなかったのですね。CogState社の技術は、例えば、人がトランプの裏表・絵柄・色に示す反応や記憶力のデータを解析することで、簡単に脳の運動神経や短期の記憶力・注意力などを数値として測ることができます。この技術を使えば、今後日本の大きな課題となる認知症に解決策を見出せると思いました。「これこそ私が探し続けてきた技術だ!」と運命を感じましたね。日本にこの技術を広めるために、起業に踏み切ったのです。

――起業前は、どのような仕事を経験されてきたのでしょうか。

 大学卒業後、最初に就職したのは国内の乳業会社の研究所です。大学での専攻を学んだことを生かせるという視点で企業を探していましたが、当時は女性の就職は本当に厳しくて、女性で本社勤務なんてほとんど求人がありませんでした。教授に頼っているだけでは自分の望む就職先は見つけられないと思い、自分の足でひたすら企業を回って自分を売り込みに行っていましたね。でも、最初に就職した会社で女性に与えられる機会の少なさに限界を感じ、もっと専門性を身に付けなくてはこの先の可能性は広がらないと思い、結局大学院に戻りました。
  博士課程を終えた後は、前職で日本企業のお堅い風土は身にしみて感じましたので、風通しが良く比較的女性でも活躍の場が与えられる外資の製薬メーカーに就職しました。その後、コンサル会社に転職し、さらに医療系のベンチャー企業に投資をする仕事を経験した後、CogState社の技術に出会って今に至ります。
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