[理系ナビ]日経BP社専門情報誌プレゼント企画
日経コンピュータ編集長理系就活コラム ITの仕事に関する10の質疑応答


 IT(情報技術)関連の仕事について、理工系の大学生が就職を考える際、参考になる話を書いてほしいと依頼を受けました。私は今年の1月1日から日経コンピュータという雑誌の編集長をしております。昨年までは記者として通算20年以上、ITのビジネスやITを利用する現場の取材をしてまいりました。このサイトを読まれている皆さんと同じ理工系大学を出ておりますが、社会人になった時から記者をしているので、ITの実務経験はありません。門前の小僧ではありますが、長年の取材経験から、ITの世界に詳しいほうだと自負しています。

 私に依頼が来た理由は、ジャーナリストという中立の立場から、ITの仕事を解説してほしい、ということでしょう。しかし冒頭から、身も蓋もないことを書きますが、私は中立ではありません。20年もITの取材をしておりますから、私がお世話になってきたのは、コンピューター・メーカーやITサービス会社、あるいは一般産業界においてコンピュータの利用に取り組む情報システム部門の方々、つまりITの当事者ばかりです。彼ら彼女らは今、人手が足りず苦労されており、理工系の学生に一人でも多くITの仕事についてもらいたいと切望しております。したがって私としても、理工系の学生、とりわけコンピューターの勉強をされた方には、ぜひともITの世界で仕事をし、キャリアを積んでいっていただきたいと思うのです。

 さらに露骨なことを書きますと、ITの仕事をされている人が、わが日経コンピュータの対象読者でありますから、学生の方に次々とITの世界に入っていただかないと、私の読者が増えないのです。中立ではないと書いたのはこういう意味です。嘘を書くつもりは毛頭ありませんし、できる限り客観的に書いていくつもりですが、私の立場が以上のようなところにあることを頭に入れて以下の文を読んで頂ければと思います。

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 ITの仕事には他の仕事にはない、決定的な特徴があります。最初にこのことをお伝えしたいと思います。就職とはあまり関係がないかもしれませんが、この特徴についてだけでも読んで下さい。厳密に言うと、それはIT、すなわちコンピューターというものの特徴です。それはコンピューターという技術の中に、目的が入っていないということです。

 例えば自動車を買う場合、目的は車を運転し、あちこちへ移動することでしょう。石油化学プラントを建設する場合、目的は原油から科学物質を造ることでしょう。つまり、自動車や化学プラントは目的を内包しています。何を当たり前のことを書くのか、と思われるでしょうが、コンピューターの一例としてパソコンを考えてみて下さい。パソコンを買う目的は何でしょう。ワードプロセサソフトを使って文章を書く、インターネットと接続してネットサーフィンをする、住所録を作り年賀状を印刷する。人によって様々です。

 企業が購入する、より大型のコンピューターにいたっては、販売管理、給与計算、生産管理、技術計算など、ありとあらゆることに使われています。この場合もコンピューターに何をさせるかは、企業によって異なります。つまり目的はコンピューターの外にあり、コンピューターを使う人が自分で決められるのです。ここを誤解していると、目的が曖昧なままコンピューターを買ってしまい、うまく利用できなかった、といった悲劇が起きたりします。

 したがって、コンピューターに関わる仕事をする人は、コンピューターそのものを設計したり作ったりするだけではなく、コンピューターを何に使うのか、といった目的を考えるところまで手伝わないといけません。そして、うまくいけば、目的、つまり夢を実現する具体的な手段、すなわちコンピューターシステムを自分の手で作り出せるのです。

 ここがコンピューターの仕事、ITの仕事の特徴であり、もっとも面白い点です。「ITを使ってこんなことができるのではないか」と目的まで考えられるのですから、大風呂敷を広げると無限の可能性があります。自動車メーカーに入った人が、「さて、この自動車を何に使ったらいいか」と考えることはまあ、ありません。

 歴史的経緯を書くと、コンピューターは当初、計算機であり、事務計算や科学技術計算のどちらかだけに使われていました。この段階は、目的を内包していたと言えましょう。しかしその後、コンピューターはどんどん進化し、インターネットと組み合わせて利用できるようになり、その応用範囲を飛躍的に広げたのです。


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