理系のためのアクチュアリーガイド

確率や統計といった高度な数理知識を要する、理系最難関資格のアクチュアリー。
毎年12月に社団法人日本アクチュアリー会が実施している試験に合格し、アクチュアリーに必要な専門知識と問題解決能力があると認められた者だけが、アクチュアリーとして認められます。 既に、アクチュアリーの仕事内容については理系ナビでもご紹介していますが、実際にアクチュアリーになるための試験についてはまだご存知ではない方が多いのではないでしょうか。 今回は、日本興亜損害保険の現役アクチュアリーの方にインタビューをして、アクチュアリーの試験概要や効率よい勉強方法についてうかがいました。


アクチュアリーの歴史

古屋氏:
アクチュアリーの歴史は生命保険分野の方が長く、損害保険分野の発展はここ3、40年だと言われています。もともとは17世紀のイギリスが発祥で、遺族の生活を保護するために、加入者の年齢や加入年数などに応じて保険料を積立てる制度ができたのが始まりでした。当時の社会の死亡率を統計や確率を用いて計算し、保険料を算定した専門家が現在のアクチュアリーです。人の生死を対象とした長期の保険は、将来の予測や想定リスクが変動する可能性が高くなりますよね。そういった理由から、特に生命保険分野のアクチュアリーが必要とされてきたのでしょう。

島本氏:
日本においても、現在約1,200名いるアクチュアリー正会員のうち、生保アクチュアリーが約500名、損保アクチュアリーが200名弱と、その人数には2~3倍ほど差があります。歴史が長くてアクチュアリーの人数が多い分、生命保険分野の方が研究が進んでいる面もありますが、一方で、時代の流れと共に新しいリスクが生じるため、今後は損害保険分野のアクチュアリーも生命保険分野同様に増えていくと思います。また、企業の年金制度の見直しの必要性から、年金分野のアクチュアリーの活躍フィールドも広がりつつありますね。



古屋正人氏 アクチュアリー正会員

古屋氏: 
特に損害保険分野に関して言えば、アクチュアリーの業務は大きく4つに分類できます。
1つ目は、新しい商品開発や既存商品の改定を行なう際に、統計データに基づいて商品ごとの収支分析をしたり、保険料の水準を検証したりする『商品開発』分野ですね。損害保険会社では、最も多くのアクチュアリーが配置されるセクションだと言えます。

2つ目が、年間の収支予測を立て、責任準備金・支払備金の評価を行なう『経理』分野。損害保険は特殊な業態なので、「損害保険会計」という特別な会計処理を適用して、一年間にどれくらいの損益があったかを測っていきます。また、企業活動のグローバル化に伴う国際会計基準の導入を目前にしており、保険負債の時価評価等を行う必要性があることからアクチュアリーの需要がより高まっている分野でもあります。

3つ目は、自己の保有するリスクを、他の保険会社に移転して分散させる『再保険』を扱う分野。例えば、飛行機が墜落したり自然災害が起きたりすると、何百・何千億の損失が出るので、1社だけでそのリスクを保有するのはとても危険ですよね。そこで他の保険会社にリスクを移転し、自己の保有リスクを低減する手法が『再保険』です。ただし、ただ単にリスクを移転するのではなく、どれくらいのリスク量を移転するのが適切かを統計的に分析することがアクチュアリーの仕事となります。逆に、他社のリスクを引き受けることもあるので、自社で引き受け可能な範囲の適正なリスク保有量を検証したりもします。

最後の4つ目が、現在特に脚光を浴びている『リスク管理』分野です。保険引受けリスクや資産運用リスク、事業遂行上発生するオペレーショナルリスクなど、保険会社にもさまざまなリスクがあります。そういったリスクをいかにコントロールするか、金額にするとどれくらいのリスク量になるか、資本に対するリスク量は適正か、等の分析・評価を行います。支払能力を確保しつつ、保険会社にはより適正なリスク管理が求められるため、現在最も注目を集めている分野でもあり、今後よりいっそうアクチュアリーの活躍が期待される仕事なのではないでしょうか。